井上真偽/アリアドネの声
個人的には最近読んだ本の中ではもっとも面白かった作品。
設定が、あの有名作、夕木春央/方舟とやや被っている。
地震が起こって地下施設に閉じ込められるというのが一緒。ただし方舟は、全員が閉じ込められて、どうやって脱出するかという話であるのに対し、こちらのアリアドネの声は閉じ込められるのは一人で、その一人を外側からどうやって助けるか、という話である。
ただ、この閉じ込められた一人というのが、現代のヘレンケラーという三重苦を持った女性というのが問題。
施設内で発生した火災などで救助隊が奥まで入ることができないため、ドローンを使ってこの女性を安全圏まで誘導するというミッションがスタートする。
そのドローンを操縦する技師が主人公。様々な危機を乗り越えながら、少しずつ目的地に向かっていく。
終盤に近付くにつれ、ある疑惑が生じる。
この女性、三重苦のはずなのに、時々見えている、あるいは聞こえているとしか思えないような行動をとることがあるのだ。
この状況をライブで追っているSNSだけではなく、救出チームですら、その疑惑に取りつかれ始める。
残りページ数が少なくなるほど、これまだいろいろと課題が残っているけど解決するのか?と読者の一人として心配になる。
そして、その疑惑と課題が、ラストで全て解決する瞬間は感動的で、見事というほかない。
序盤から提示されている、正直これいる?というような主人公の同級生にまつわるエピソードまでもが、一気に回収される。
ただ残念なのは、本当にクズである迷惑系Youtuberがでてくるのだが、そいつが報いを受ける展開が何もなかったところ。
近いうちに映像化されそうな作品だと思う。人助け映画というジャンルは、邦画界は得意そうだし。