加門七海/祝山(映画公開予定)

少し前に話題になっていたホラー小説が実写化されるらしい。
ということで、今更ながら祝山を読んでみた。
実はホラー映画は大の苦手。ヒトコワ系はまだ大丈夫なのだが、心霊系は本当に無理。
しかし小説だったらいけるかも、そう思いながら覚悟して読んだのだが、正直拍子抜けという内容だった。
短い小説だし、文章も改行が多くて軽い。悪く言うとスカスカ。
ストーリーもベタ。軽い気持ちで肝試しに言った若者グループのメンバーが、家に帰ってから妙な心霊現象にに悩まされるというもの。もう何百回と耳にしたような話だ。
しかもホラーなのだが、実はあまり怖くはない。直接的な怖さというより、後からじわーっと怖くなる感じ。
終わり方も、それでいいの?と言いたくなるぐらいあっさり。
全く怖くない、という読者も大勢いたことだろう。

さて、この作品の映画化だが、大丈夫だろうか。
とにかく抽象的な気味悪さに終始する話で、幽霊とか直接的なものは全く出てこない。
多分、小説をそのまま忠実に映画化しても、全く面白くないと思う。
原作の売りの一つである、作者の実体験が元になっているという宣伝文句を強調して、ブレアウィッチプロジェクトのようなモキュメンタリー風の作品にする手もあるが、橋本愛という有名女優が主人公なので、それも難しいであろう。
むしろ、原作にないショックシーンを付け足すとか、大幅に改変するとか、原作ファンの怒りを買うだけの映画になる可能性もある。
公開前ではあるが、残念ながら歴史的な駄作になる予感しかない。

勝手にネガティブなことばかり言っても仕方がないので、原作既読者として見所となりうるポイントを挙げておくと、
主人公を巻き込むきっかけとなる、矢口という女性の登場人物がいる。
元々性格が悪いのだが、話が進むにつれてどんどん鬱陶しく、そし狂っていく人物だ。
苗字が一緒というだけで、勝手に元ハロプロの某タレントを連想しながら読んでいたが、明らかにこの作品の肝になる存在である。振り切るほどの狂気じみた演技に期待したい。演者の石川恋にとっては、非常に演じ甲斐があるキャラクターだったに違いない。

原作の恐怖シーンは、不可思議ではあるが今一つピンとこない現象ばかりである。例えば、みんなに見えているものが見えないとか、ある場所に行くと気分が悪くなるとか、あったはずの建造物が無くなっているとか。
そのあたりを、いかにビジュアルで表現するのか。映画ならではの工夫も、少しだけ期待したい。
具体的には冒頭の肝試しの場面、主人公が小物店に潜入するシーンと、異常な激痛に倒れ救急車を呼ぶシーン。そんなところの演出をどうするのかは気になる。

ところでタイトルの祝山、元は位牌山という、いかにも縁起の悪そうな名前の山なのだが、なんと日本全国にいくつも同様の山があるらしい。入っていけない山が、こんなにあるとは全く知らなかった。
山の近くに住んでいる人、あるいは登山やハイキングが趣味の人たちには常識なのだろうか。
そっちの事実を知ったことのほうが、ある意味恐怖だった。

2026年6月12日映画公開予定

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