野宮有/殺し屋の営業術
毎年この時期になると、小説だと本屋大賞ノミネート作品、映画だとアカデミー作品賞ノミネート作品に触れる機会が多くなる。
アカデミー賞(3月16日発表)のほうは、ますます政治的な要素が大きくなり、もはや受賞作イコール面白い作品ではなくなって久しいので、あまり興味が沸いてこない。
しかし本屋大賞(4月9日発表)のほうはどうだろうか。残念ながらこちらも、自分の好みに合うとは言い難い。
多分投票権を持っている書店員は、圧倒的に女性が多いのではないだろうか。最近は女性作家のノミネートや受賞が多いことから、勝手にそんな気がしている。
ところが今回の2026年本屋大賞は驚くべきことに、ノミネート10作品のうち7作品が男性作家なのだ。これはかなり異例なことではなかろうか。
ちなみにノミネート作品は、
湊かなえ/暁星
瀬尾まいこ/ありか
朝井リョウ/イン・ザ・メガチャーチ
櫻田智也/失われた貌
夏川草介/エピクロスの処方箋
野宮有/殺し屋の営業術
伊坂幸太郎/さよならジャバウォック
佐藤正午/熟柿
森バジル/探偵小石は恋しない
村山由佳/PRIZE―プライズ―
折角なので、何冊か手に取って読んでみたが、確かに面白いものが多い。
しかし、突き抜けた面白さかというと、ちょっと違う気もする。特によく名前が知られた人気作家(誰とは言わないが)は、確かに面白かったけど、昔はもっと面白かったよな・・・と感傷にふけることも。
そんな中、個人的に密かに本屋大賞を楽しむコツだと思っているのが、初見の作家の作品を読むこと。
実は、その中に当たりが多いという実感を持っている。
前置きが長くなったが、この殺し屋の営業術は、かなり面白い作品だった。
とにかく、殺し屋の営業という役割に着目し、主人公に据えたところが素晴らしい。
確かに、重要な役割である。実際の殺し屋業界は知らないが、軽く見られがちな役どころではないだろうか。
そこにフルコミッションの営業会社で異常な実績を上げた主人公が、ひょんなことから裏世界に足を踏み入れる。
そしてその世界で実績どころか、本来の楽しみに目覚めていく。
かなり血なまぐさい場面もあるが、騙し騙されのコンゲーム的展開は、十二分に楽しめた
若干、人物の立ち位置が分かりにくい場面があったり、後半に登場するライバルの女性など、類型的すぎるキャラクターが登場したりするのには少々興醒めだったが、それを差し引いても楽しめた。まさか指輪が伏線だったとは!
全く知らなかったのだが、江戸川乱歩賞受賞作だったらしい。巻末を読んで初めて知った。
多分、アニメ化、実写化するだろうし、続編も書かれることだろう。まだまだ掘り下げていないキャラクターもいるし。